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2016年4月20日(水)

グリーグとイプセンの「ミスマッチの妙」
フルート、オーボエ首席奏者、斉藤&加瀬に聞く『ペール・ギュント』

photo:M.Terashi/Tokyo MDE

 今週末24日(日)より、いよいよ開幕となるミハイル・プレトニョフ指揮 グリーグ『ペール・ギュント』。
初日のリハーサル後、フルート首席奏者・斉藤和志とオーボエ首席奏者・加瀬孝宏にインタビューしました。






(写真)左から首席フルート奏者・斉藤和志、首席オーボエ奏者・加瀬孝宏



――初日のリハーサルを終えていかがですか?

斉藤和志
フルート
 『ペール・ギュント』は劇付随音楽ということで、音楽にはオペラともまた違う特有の「すき間」のようなものがありますね。R・シュトラウスのオペラのように音を敷き詰めていくのではなくて、音楽的にはすごく構造がシンプルで、例えば執拗に同じことを繰り返していたり、単純なものを遠慮せず提示していたりというところがあって。 映画音楽なんかもそうですが、映像といっしょになったときにぴったりくるという感じがします。舞台で、音楽や芝居などすべてが一つになったときに、お客様が自分に物語を投影して考える時間、余裕があるくらいの、ちょうどいい「すき間」みたいなものが、この作品にはある気がします。 この曲をコンサートで成立させて、退屈させない、音楽的にも充実した内容で、かつ、やりすぎない、押しつけがましくならないようにするには、どうしたらいいのかな、ということをマエストロのリハーサルをしながら考えていました。

加瀬孝宏
オーボエ
 楽譜だけ見たら「え、こんなにシンプルでいいの?」と思うところも多いんですよ。今の時点ではオーケストラだけなので、まだ効果のほどが見えないけれど、おそらく、「語り」と歌とが入ってきたらすごくいいものになっているんじゃないかと想像しながらやっている…、というのが初日のリハーサルですね。

斉藤
フルート
 マエストロ・プレトニョフと東京フィルはずいぶん長いことやってきていますから。 マエストロも最初のころはもっと注文も多かったですし、独自のさまざまなアイディアを出してくれて、いろいろなチャレンジを提案されたりしていたのですが、お互いにだんだんとわかってきて、言葉が少ないのにどんどん音楽がマエストロ・プレトニョフの音になっていくという感じがしますね。

加瀬
オーボエ
 マエストロ言葉が少ないですからね。長い付き合いの中でわかってきている部分もあって、その中から、どういう音がするのかな?と、こちらでも組み立てながら音を作っていくから面白いですね。リハーサルでも大げさなことを言う訳じゃないんだけど…

斉藤
フルート
 マエストロの音になっていくんですよね。

――マエストロのリハーサルは本当に言葉が少ないですね。
  それで音が出来上がっていくのが不思議です。

斉藤
フルート
 『ペール・ギュント』はお話をちょっと見ると、毒もあったり、いろいろ奇妙なお話もあったりする一方で、グリーグの音楽はけっこうロマンチックで、音楽と筋書きの「ミスマッチの妙」があったりもするのかなと思います。われわれもどこまでそれに付き合っていけばいいのかと思うんですが。 今日、マエストロが「ここは“豚のシーン”だから、みっともない感じで」とおっしゃったところがあるのですが、音楽はすごく美しく書かれているので、汚い音で演奏したときにお客様にどういう印象を与えるのかな、と。 どこまで汚い音で(笑)演奏すればいいのかな、とかいったことも考えながらやっています。わざと汚い音を出しても、お客様には「ただの汚い音」で聞こえてしまうこともありますから。 お客様に「ああ、こういうシーンだから、こういう音なんだな!」とわかっていただけるようにするには、さじ加減が必要ですね。シンフォニーと違って、表情として、可愛いシーンとか、すごく美しいシーンとか、よりキャラクターをはっきりさせる演奏には、なっていくと思っています。明日から歌手や「語り」も入ってきますし、普段のコンサートと違ったところも楽しんでいただけたらと思います。

加瀬
オーボエ
 うん、面白いですよね。



――ペール・ギュントってどういう人間だと思います?

斉藤
フルート
 すごくりっぱな人でもないし、かといってむちゃくちゃ悪い人でもないし、せいぜい僕が住んでる足立区によくいるいきがった兄ちゃん、っていう身近な感じですかね?いわゆる北欧神話みたいな、英雄的なイメージではないですよね。 そういう意味ではあまり肩肘はらず、普通の人間と同じだなと共感して見ていただけるのではないかと思います。

加瀬
オーボエ
 劇音楽の伴奏って面白いですね。オペラはたくさんやっていますけど、劇音楽はあまり機会がないですから。

斉藤
フルート
 オペラと本当に違うのは、オペラは音楽が主役ですが、劇音楽は劇が主役なんですよね。圧倒的に。

加瀬
オーボエ
 今日のオーケストラだけのリハーサルだと、音楽的に何にもない感じのところがあるもんね。延々と、何もない感じで音楽だけ続くところがありまして、そこは演劇が主役の部分なんです。音楽が劇の邪魔をしちゃだめなんですよね。

斉藤
フルート
 音楽は無地の映像をずっと映していって、情景を描くのは別の人、という所があります。オペラはセリフよりも歌よりも音楽のほうがずっと有名、ということがたくさんありますが、プッチーニみたいに音楽がウワーっと盛り上がって、それで成立するというところがありますが、この曲に関しては演劇が主役と感じますね。

加瀬
オーボエ
 そうですね。だからオーケストラ大好きという人もそうですが、演劇大好き、物語大好き、という人にとっても、絶対に面白い定期なんだろうと思いますよ。

斉藤
フルート
 さっきも言いましたが、音楽にちょうどいい「隙間」のようなものがありまして、「自分だったらこうなんだろうな」、とか自分のイメージで、自分なりに感じられるスペースがすごくあるはずなので、そこがすごく楽しみだと思います。 本当に、一度聞けばすぐわかると思うんです。


――オーケストラとしては「音楽が主役の部分」が聴きどころになると思いますが、  それはどのあたりでしょう?


斉藤&加瀬
 やっぱり『朝』ですかね!!

斉藤
フルート
 我々(フルート、オーボエ)がいないと曲が始まらないですからね。

加瀬
オーボエ
 『朝』は組曲でもよくやる曲なんですが、実はけっこう際どいパッセージでもあるんですよね…

斉藤
フルート
 お客様には「ああ、『朝』っていい曲ね…!」と思っていただける演奏をするには、実は!けっこう乗り越えなければいけないハードルもあるんです。

加瀬
オーボエ
 有名な曲ですが、テンポもさまざまですし、指揮者によっても、ホールによっても、本当に毎回いろいろな演奏になりますしね。

斉藤
フルート
 演奏する者としては、「フルートやオーボエがよかった」と思っていただくより、「すごく素敵な曲だったね」と思っていただける演奏にしたいなと思いますね。

加瀬
オーボエ
 「組曲」と今回の全曲版では曲の順番も違いますし、また印象が大きく変わると思います。

斉藤
フルート
 出すぎず、引きすぎず、劇伴音楽ならではの、「ちょうどいい」演奏ができたらと思います。舞台の演奏って演奏する側だけでなく、お客様の興奮度とか、それこそ本当に微妙な、その日の天気とか温度とか、その場の空気が影響しますから。 そこは柔軟に対応しながら、舞台を作っていきたいなと思います。



 ――ありがとうございました。楽しみです!


4月24日[日]15:00開演(14:30開場)
Bunkamura オーチャードホール

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4月25日[月]19:00開演(18:30開場)
サントリーホール大ホール

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4月27日[水]19:00開演(18:30開場)
東京オペラシティコンサートホール

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指揮: ミハイル・プレトニョフ
語り: 石丸幹二
ソールヴェイ(ソプラノ): ベリト・ゾルセット
ペール・ギュント(バリトン): 大久保光哉
アニトラ(メゾ・ソプラノ): 富岡明子
合唱: 新国立劇場合唱団



グリーグ/劇付随音楽『ペール・ギュント』全曲(字幕・語り付) 曲目解説



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