ホーム > インフォメーション > コンサートマスター三浦章宏が語る 2月定期演奏会の聴きどころ「マエストロ チョン・ミョンフンによる『田園』『春の祭典』」

インフォメーション

2024年2月14日(水)

――今回はとても毛色の違った、時代も異なる二つの作品です。マエストロがどういうお考えでこの選曲をされたのか、現時点では何もおっしゃっていなかったということで、我々であれこれ想像して楽しんでいるのですが……



©上野隆文

「ひとつには、『自然』というテーマの共通点がありますね。『田園』はもちろんですし『春の祭典』はタイトルに“春”というキーワードがある。まあ、『春の祭典』は、踊りや生贄の儀式、そういった物語が入ってくるわけですが。
 ベートーヴェンはマエストロ チョンがこれまでに何度も取り組まれていて、私もマエストロと『田園』を少なくとも2回はご一緒していると思います。マエストロ チョンのベートーヴェンは、東京フィルのポスト就任初期のころに全曲演奏(2002~2003)をやりました。私はそのプログラム全てに出演していたのですが、その頃からマエストロはオーケストラに音楽や音に対する高い要求をされ、とても厳しい練習をされていました。なかでも『田園』は特に厳しかったと記憶しています。「ネイチャー(Nature)、自然です。楽器の音を出すのではなく」と言って、「まだ違う、まだ違う」と何回も繰り返しました。そのたびに、美しいハーモニーを作るのだということも何度もおっしゃいました。
 今回ももちろんアプローチは同じだと思うのですが、毎回のように、私たちオーケストラがどれくらいできるだろう、マエストロの理想に応えられるだろう、とチャレンジする楽しみがありますね。近年とくに東京フィルは本当に素晴らしいサウンドになってきていますので、マエストロの求める音楽にさらにどれだけ応えられるかなという期待感があります。

 そして『春の祭典』は、また違ったマエストロの面が見える作品だと思います。東京フィルはここ何年も〈オペラ演奏会形式〉でご一緒していますが、ドラマを音楽としていかに語るかという観点での手腕も素晴らしく、これもとても楽しみです。『春の祭典』は20世紀の作品で、時代は新しいけれど今やオーケストラのレパートリーとしては“古典”と言って差し支えない、最もポピュラーな作品の一つです。でも、オーケストラの色々な能力が求められる。そこからどうやってドラマを作っていけるかという期待が膨らんでいます」。



――『田園』『春祭』は珍しい組み合わせですが、この組み合わせで演奏されたことはありますか? 


「いやいや、まったくありません」。



――マエストロはリハーサルでお話しされることもとても興味深く、毎回楽しみです。この珍しい選曲の秘密がリハーサル中に少しずつ明らかになっていくのかもしれません。
ところで、マエストロ チョンが東京フィルで『春の祭典』を指揮するのは2004年以来の20年ぶりだそうです。ここ数年はベートーヴェンやブラームス等、ある種シンプルな古典的な音楽を取り上げることが多かったですが、ここへきて今年2024シーズンは、2月の『春の祭典』や6月のメシアン『トゥランガリーラ交響曲』のような20世紀の大規模な作品を続けて取り上げます。




ⓒ上野隆文

“めちゃめちゃ楽しみ”です。マエストロのそういう大きな作品の演奏も素晴らしいのを知っていますから。マエストロはメシアンとも親交が深かったですよね。私は前回(2007年)の『トゥランガリーラ交響曲』には乗っておらず、自分自身でもメシアンを身近に感じてはいなかったのですが、他のコンサートでマエストロが指揮するメシアンの作品に触れて、素晴らしい音楽だと知りました」。



――マエストロチョンのメシアンの素晴らしさというのは、どのような素晴らしさなのでしょうか


「メシアンが意図した作品への共感をマエストロのイメージの中で音楽として表現する、そこに大きな説得力があるのです。『なるほど』と。
 他の作品でもすべて共通してはいますが、マエストロが作品を解釈して、そこで『もっとよいものがある筈』といつも追い求める。そして、そのためにオーケストラがどういうサウンドを出すかということがとても明確。実現するのはとても難しいのですが、結果として素晴らしいものになる。今回もそういう体験ができるに違いないと思っています」。



――コンサートマスターとして、世代交代にともなって、新しいメンバーにマエストロの音楽を共有するうえで感じていること、心がけていらっしゃることはありますか?



ⓒ上野隆文

「とくにないのですよ。コンサートマスターとしてマエストロの音楽を受けとって、こういうふうに行きますよ、とリードする役割はするのですけれど、前からよく知っているメンバーから若いメンバーに伝わることもあり、マエストロの指揮から直接に受け取ることもあるでしょうし。若い人はみんな順応力があり、楽器を弾く技術も高いので、違和感などはなく練習から本番に向かって行っているので、あまり苦労や工夫をしているという実感はないです」。



――前回マエストロと『田園』を取り上げたときは、メインプログラムは同じベートーヴェンの「7番」との組み合わせでした。


「6番&7番の時は、曲想は違うけれど同じベートーヴェンなので共通点があり、それほど違和感はありませんでした。対して、今回は全然違う。はっきり言うと音の出し方から全然違う。そこを、私たちは弾き分けなければいけないし、マエストロもそういう要求をされるだろうと思います。どうなるかはやってみないと分からないけれど。全然違うんですよ。それは、聴いている人にとってはすごく面白いのではないかなと思います。その面白さをマエストロも狙ったのかもしれません」。



――この2曲を並べて聴く機会がそもそもないので、聴いたあとどんな気分になるのだろうと、かつてない驚きがありそうで楽しみです。


「コンサートって料理のフルコースみたいなところがあるけれど、今回は前半と後半で全く違ったタイプの刺激的なフルコースを考えたのでしょうね。 でもね、曲の冒頭は『田園』と『春の祭典』とでちょっと似ています。“自然の声”が描かれている。『田園』でも――マエストロは曲の出だしには特に厳しいのですけれど――「『自然の中に何かが生まれた瞬間』みたいな音を出してほしい」とおっしゃるのです。難しいですけれど。なにかが「ぽっ‥」と生まれてくる。『春の祭典』も出だしの部分には共通点があると思います。その後の展開はずいぶん違ってきますけれど(笑)。 時代は違いますが、ベートーヴェンもストラヴィンスキーもそれぞれの時代の先駆者であり革命者であり、開拓者の精神がすごかった人たちですから、その点は二人の作曲家に共通しているところかもしれません。マエストロは、そのあたりの共通点も感じているかもしれませんね。かつてないものを生み出した二人、という」。



――お客様に向けてお願いします


「今回の2曲の並びというのは非常にユニークで、それぞれでマエストロ チョンと東京フィルの魅力が最大限に発揮できると思います。期待してぜひ聴いていただければと思います」。



2023年1月オーチャード定期演奏会カーテンコールより©藤本 崇



2月定期演奏会 

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2月22日[木]19:00開演
サントリーホール
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2月25日[日]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール
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2月27日[火]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール

指揮:チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)

楽曲解説(PDF)


ベートーヴェン/交響曲第6番『田園』
ストラヴィンスキー/バレエ音楽『春の祭典』


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1回券料金

  SS席 S席 A席 B席 C席
チケット料金

¥15,000

¥10,000
(\9,000)

¥8,500
(\7,650)

¥7,000
(\6,300)

¥5,500
(\4,950)

※( )…東京フィルフレンズ、WEB優先発売価格(SS席は対象外)


主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(創造団体支援))| 独立行政法人日本芸術文化振興会(2/22公演)
協力:Bunkamura(2/25公演)

公演カレンダー

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