ホーム > インフォメーション > 5月定期公演 聴きどころ | 「音楽」として味わうオペラ

インフォメーション

2015年4月25日(土)




『レスピーギ:ローマ三部作』

 みなさん、お待たせしました! 東京フィルハーモニー交響楽団5月の定期演奏会には、満を持して、首席客演指揮者に就任したアンドレア・バッティストーニが登場します!

 イタリアの新星バッティストーニは、1987年ヴェローナ生まれ。ちょうど2年前の2013年5月、26歳の若さで東京フィルと共演、レスピーギ『ローマ三部作』の指揮で聴衆を圧倒し、その演奏会がCDになって絶賛の嵐が巻き起こりました。その後も東京フィルと共演したマーラー『巨人』がディスク化(ともに日本コロムビア)。前者は『レコード芸術』読者投票による2014年ベスト・ディスク第2位にも輝き、「クラシック・ファンの誰もが夢中」と言っていいほど、確固たる人気を獲得しています。



 アンドレア・バッティストーニ

 一方で、オペラ指揮者としてもめきめき頭角を現しているバッティストーニ。同郷の巨匠トスカニーニに倣うように、元々チェロを学び、指揮者として歌劇場で叩上げた経歴を持つ彼は、2014年6月よりジェノヴァ・カルロ・フェリーチェ歌劇場の首席客演指揮者に就任。9月には、ベルリン・ドイツ・オペラの新制作『ナブッコ』で新シーズンの幕開けを飾る大役を担いました。日本でも今年2月、二期会のヴェルディ『リゴレット』を指揮。熱のこもった舞台稽古や公演の様子が各メディアで伝えられ、多くの人がその音楽の躍動感とひらめきに魅了されています。

 5月の定期演奏会の演目は、まさに彼の十八番であるイタリア・オペラの世界。プッチーニのオペラ『トゥーランドット』(演奏会形式/17日オーチャード定期、18日サントリー定期)と、ロッシーニ、ヴェルディ、プッチーニ、そしてレスピーギの管弦楽曲を並べた「オール・イタリア・プログラム」(21日東京オペラシティ定期)です。




ジャコモ・プッチーニ

 『トゥーランドット』は、プッチーニ最後のオペラ。作曲家が曲の完成を見ぬまま亡くなったため、弟子のフランコ・アルファーノにより補筆されました。1926年ミラノ・スカラ座で初演された物語のあらすじは、以下のようなものです。

 舞台は“伝説の時代”の北京。戦いに敗れ放浪の身の王子カラフは、美しい姫君トゥーランドットに一目ぼれ。ところが姫は、プロポーズする王子たちに3つの謎を出し、解けなければその首をはねるという残忍な心を持っていた。見事謎を解いたカラフは駄々をこねる姫に「自分の名がわかれば命を差し出す」と逆に謎かけをする。トゥーランドットが役人たちに、カラフの名がわかるまで誰も寝てはならないと命令していたため、宮殿はものものしい雰囲気に(そこでカラフが「誰も寝てはならぬ、あなたもそうだ王女様」と歌うのが、フィギュアスケートで一躍有名になったあのメロディ)。カラフの父王ティムールと女奴隷リュウは連行されてしまう。ところがリュウは、拷問にかけられてもカラフの名を明かさず自殺してしまう。動揺するトゥーランドット。カラフが駆けよりキスをすると、その氷の心が溶けはじめ……結末は愛の讃歌。おとぎ話のような舞台装置をはぎとったとき、プッチーニの華麗なオーケストレーションから見えてくるものは何か。期待が高まります。


 一方、バッティーニ流イタリア・プログラムに登場するのは、ロッシーニの歌劇『コリントの包囲』序曲、ヴェルディの歌劇『シチリア島の夕べの祈り』より舞曲、プッチーニ『交響的前奏曲』、そしてレスピーギの組曲『シバの女王ベルキス』の4曲。通好みな選曲ですが、それだけに、バッティストーニの情熱と強い意志が伝わってきます。

 すべてに共通するのは、オペラの国イタリアの作曲家ならではの滔々としたメロディ。とりわけプッチーニの『交響的前奏曲』は、このコンサート最大の収穫となるでしょう。プッチーニが青年期に書いた、いわばプッチーニの原点ともいうべき“歌う管弦楽”は、オペラ『トゥーランドット』と対にして聴き比べてもおもしろいはずです。


ジョアキーノ・ロッシーニ

主要オペラの再評価が続く19世紀のヒットメイカー、ロッシーニからは、これまた近々大復活を遂げそうな『コリントの包囲』序曲を。十字軍の時代、敵対するギリシャとトルコに生まれた男女の悲恋の予感を孕みつつ、あくまで上品に、しかも極めて交響的にまとめ上げられた後期の傑作です。プッチーニと並ぶオペラ作曲家ヴェルディからは、劇場レパートリーとしても人気の『シチリア島の夕べの祈り』第3幕の舞曲を。そして、前回「バッティストーニ伝説のはじまり」と言わしめたレスピーギより、作曲家が最後に手がけたバレエ組曲『シバの女王ベルキス』でとどめを刺します。『ローマ三部作』に次ぐ大曲として知られるこの組曲では、旧約聖書の世界を舞台に、異国情緒たっぷりのアラビア風の旋律や打楽器が、レスピーギらしいスペクタクルを盛り上げる隠れた名曲。このコンサート、必ずやバッティストーニ&東京フィルの新たな事件となるはずです。


 「私たちが一緒に演奏していくうえで、いろいろとアイデアがあるのですが、それらは主に3つに分けられます。まず、イタリア人作曲家によるオーケストラのための重要な作品を見いだし、その価値を再確認して演奏していくこと。そして、オペラ作品の演奏会形式上演を通して、舞台装置を削ぎ足られた作品として純粋に音楽的な観点から味わう機会を得ること。最後に、時代も国も楽派も異なる伝統的な交響曲レパートリーを探求していくことです。皆様とご一緒する新たなシーズンは白熱したものになるでしょう」(2015年1月のプログラムより)。

 首席客演指揮者就任の折、私たちにこんなメッセージを届けてくれたバッティストーニ。5月の定期演奏会は、そんな彼のアイデアをさっそく具現化する華々しい舞台になりそうです。この機会を、決して逃してはならない――バッティストーニ&東京フィルとともに、音楽の新しい地平へ踏み出しましょう!




高野麻衣(たかの・まい)


コラムニスト。上智大学文学部卒(西洋文化史)。2014年の東京フィル100周年記念ワールドツアーに同行取材するなど、幅広く執筆・講演活動をおこなっている。著書に『フランス的クラシック生活』(PHP新書)など。ネットラジオ『OTTAVA Domenica』(毎週日曜午後1時~ http://www.ottava.jp/)レギュラー出演中。


ホームページ「Salonette」www.salonette.net




第864回オーチャード定期演奏会

2015年5月17日(日) 15:00 開演(14:30 開場)
Bunkamura オーチャードホール

第865回サントリー定期シリーズ

2015年5月18日(月) 19:00 開演(18:30 開場)
サントリーホール 大ホール


第865回サントリー定期シリーズ

指揮:アンドレア・バッティストーニ

トゥーランドット(ソプラノ):ティツィアーナ・カルーソー
カラフ(テノール):カルロ・ヴェントレ
リュー(ソプラノ):浜田 理恵
合唱:新国立劇場合奏団    ほか


プッチーニ/歌劇『トゥーランドット』<演奏会形式・字幕付>


第94回東京オペラシティ定期シリーズ

2015年5月21日(木) 19:00 開演(18:30 開場)
東京オペラシティ コンサートホール


指揮:アンドレア・バッティストーニ

ロッシーニ/歌劇『コリントの包囲』序曲
ヴェルディ/歌劇『シチリア島の夕べの祈り』より舞曲
プッチーニ/交響的前奏曲
レスピーギ/組曲『シバの女王ベルキス』



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