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【2018年11月定期演奏会】アンドレア・バッティストーニ『メフィストーフェレ』を語る(3)


取材・文:松本 學/ 通訳:井内美香

イタリアとポーランドの血をひく国際派、ボーイト


2016年のオペラ演奏会形式、マスカーニ作曲『イリス』(あやめ)カーテンコールより (C)上野隆文

――当時はリソルジメント(編注:イタリア統一運動)の時期(1815〜71年)でもありました。ボーイトは海外にも出ているインテリだと思いますが、この運動の影響も何かあったのでしょうか。

「私もそれほど詳しく調べていないので、間違ったことを言ってはいけませんが、リソルジメントがあったからボーイトが外国に行かなければならなかったという事実関係は多分ないと思います。彼は半分ポーランド人の貴族の血も入っていましたし、そういうシチュエーションからもフランスに出たということがあったのでしょう。フランスに何年もいたので、かなり大きな影響を受けていて、『ファウスト』の原作もドイツ語ではなくてフランス語で読んでいたようです」


『新曲』を書いたダンテ・アリギエーリ(1265-1321)の肖像(サンドロ・ボッティチェリによる)
――それにしても、どうしてボーイトは『ファウスト』を選んだのでしょう。イタリアでの当時の『ファウスト』受容というのはどうだったのですか。

「原作はイタリアではその当時はまったく、少なくとも今と比べると全然知られていなかったと思います。ボーイトも外国に行って出会っていますしね。
 この書物に触れてボーイトは、作品としての完成度が高いだけでなく、非常にロマンティックな雰囲気があり、彼が求めていた哲学的な側面を持っている作品だと感じました。そこで、『悪魔と契約を結んで』というその部分だけでなく、この書物全体で扱われている哲学的なものを音楽にしようという野望を持った――ファウストを題材にした他の作曲家とは異なり、ボーイトは第1部だけでなく第2部までも含めたすべてをオペラにしようとしたのです。きわめて大きなプロジェクトによって、未来の音楽を作り出していこうという強烈な野望を持ったという意味で、ワーグナーの影響が感じられると思います。
 その大きな野望に叶うような高みにある作品はこのゲーテの『ファウスト』、もしくはイタリアものでいうならばダンテの『神曲』くらいでしょう。ただ『神曲』は、作品としてひとつのストーリーになっていないのでとてもオペラにはしにくい。それもあって『ファウスト』を選んだといえるでしょう」


ゲーテ「ファウスト」がアーティストたちにもたらすインスピレーション


「ファウストの前に現れたメフィストフェレス」
(ドラクロワ『ファウスト』より)
――『ファウスト』に関連する作品は世の中にかなりの数があると思います。バッティストーニさんは、『ファウスト』にまつわる作品で今後プログラムを作っていこうといったお考えはありませんか?

「それってとても魅力的ですね。グノーの『ファウスト』はまだそれほど詳しくはないのですが、ベルリオーズの『ファウストの劫罰』は大好きです。リストのシンフォニーもとても好きですね。『ファウスト』というのは、ほかの分野においてもそうでしょうが、特に作曲家や音楽家に強くインスピレーションを与える題材だと思うのです。というのは、音楽家はファウストと悪魔のメフィストフェレスという2つの面を持っていなければいけないと思うからです。常に研究し勉強して新しいものを探し出してゆくというファウストの面と、人を魅了して魔法をかけてどこか別の世界へ連れてゆくというメフィストフェレスの面――アーティストはその両方の面を持っているべき存在ですから」


(C)上野隆文
――これは冗談でお聞きしますが、あなたのようなインテリはともかく、同世代の若者にとって『ファウスト』の物語は古臭くは感じないのでしょうか? バッティストーニさんもまだ31歳と随分お若いですが。

「中身はかなり歳をとっていますので(笑)。自分はとてもロマンティックなものが好きなんです。ですから偉大な過去の思想家たち、例えばゲーテ、ダンテ、ミルトンなど、こういう人たちの書いたものは、自分が生きるのを助けてくれる芸術家だったと感じています。ボーイトもそういう意味で、彼らの考えを、オペラにして私たちに伝え捧げようとしてくれた偉大な作曲家だと思いますね」



(Part 4 へ続く)



(インタビュア・プロフィール)
まつもと・まなぶ(音楽評論家)/音楽、バレエ/ダンス、映画の批評。『レコード芸術』『音楽の友』などの雑誌や、CD・DVD解説、演奏会プログラムへの執筆のほか、多くの海外取材、各種コンサートの企画・サポートも務める。共著に『地球音楽ライブラリー ヘルベルト・フォン・カラヤン』、『知ってるようで知らない バッハおもしろ雑学事典』など。

【11月定期演奏会】
いにしえの悪魔が現代に蘇る――
バッティストーニの『メフィストーフェレ』


第912回サントリー定期シリーズ 【完売間近】

2018年11月16日[金] 19:00開演(18:30開場)
サントリーホール

第913回オーチャード定期演奏会

2018年11月18日[日] 15:00開演(14:30開場)
Bunkamura オーチャードホール

指揮:アンドレア・バッティストーニ
メフィストーフェレ (バス): マルコ・スポッティ
ファウスト (テノール): ジャンルーカ・テッラノーヴァ
マルゲリータ/エレーナ (ソプラノ): マリア・テレ-ザ・レーヴァ
マルタ/パンターリス(メゾ・ソプラノ):清水華澄
ヴァグネル/ネレーオ(テノール):与儀 巧
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:世田谷ジュニア合唱団  他
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団


曲目

オペラ演奏会形式
ボーイト/歌劇『メフィストーフェレ』



助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)、独立行政法人 日本芸術文化振興会、公益財団法人 アフィニス文化財団、公益財団法人 花王 芸術・科学財団(11/16)、公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション(11/16)

主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団

公演カレンダー

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